ベニスに死す
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最近のわたくしはアッシェンバッハ氏のことばかり考えています。というのは、自分もまた、分別盛りの無分別な片恋という、彼と同じ病を病む者となったからです。初めてこれをVHSで観た時のわたくしは傲慢な17歳の小娘で、彼の悲惨なほど滑稽な姿を、嘔吐をこらえつつ嗤ったものでした。でも今、彼に再会して感じるのは、彼への共感と愛おしさです。彼の姿が自分と二重写しになる分、一層その姿は醜悪で惨めで滑稽ですがそれでも。社会的な体面に縛られた中で到底人には言えない相手に恋をして、成就の術はなく、思いを絶つこともできない。圧倒的な美の前に屈してただ見つめることしかできない、見つめるほどに深みにはまっていく心。その恐ろしさ。苦しさ。無上の甘さ。彼は不幸で、同時に幸福です。美しい恋人の姿を目と心に焼き付けながら瞑目する、そのことだけがわたくしたちに許された唯一の官能であり、彼はその祝福を確かに受け取ったのですから。 参考になりましたか? 1人中、0人の方が「参考になった」と投票しています。
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